はじめに
私は56歳になってから、ベトナム語の勉強を始めました。
学び始めた当初は、「こんにちは(Xin chào)」と「ありがとう(Cảm ơn)」くらいしか知らない状態からのスタートです。まさかこの年齢になってから新しい外国語に挑戦することになるとは、自分でも思っていませんでした(笑)。[1]
しかし、いざベトナム語の世界に飛び込んでみると、毎回のレッスンが新しい発見の連続です。その中でも、私が特に驚き、最初は頭を抱えてしまった特徴があります。
それが、「同じ意味(日本語の1つの単語)なのに、相手やシチュエーションによって違う言葉が多すぎる」ということです。
最初は本当に混乱しましたが、仕組みが分かってくると、それこそがベトナム語の最大の面白さ(魅力)だと感じるようになりました。今回は、50代の手習いで私が実際に直面した「難しいけれど、最高に面白いベトナム語のリアル」を、分かりやすくご紹介します。
目次
- ベトナム語の「あなた」は相手によって激変する
- 先生に笑われた?「好き」のニュアンスの違い
- 発音(声調)だけじゃない!「同じ音」に聞こえる罠
- 呪文のように聞こえた「マイ(mai)」の正体
- 万能だけど奥が深い「バオニユウ(Bao nhiêu)」の使い方
- まとめ:言葉の違いから見えるベトナムの文化
ベトナム語の「あなた」は相手によって激変する
日本語では、会話の相手に対して「あなた」と言えば、基本的には誰にでも通じます(実際には名前で呼ぶことが多いですが、文法的には1つです)。
しかし、ベトナム語には日本語の「あなた」に一対一で対応する言葉がありません。相手の性別や、自分と比べた年齢(立場)によって、使う単語が細かく分かれているのです。
例えば、以下のように相手を呼び分けます。
- 年上の男性に対して = Anh(アイン)
- 年上の女性に対して = Chị(チ)
- 年下の人に対して = Em(エム)
- おじさん世代の男性に対して = Chú(チュー)
- おばさん世代の女性に対して = Cô(コー)
オンラインレッスンの先生から、「ベトナム語は、相手との関係性や敬意を何よりも大切にする言葉なんですよ」と教えてもらい、深く納得しました。
日本語でも「先輩」「後輩」「おじさん」と使い分けますが、ベトナム語はそれが日常会話の『主語』や『目的語』として、すべての文章にカチッと組み込まれているイメージです。
先生に笑われた?「好き」のニュアンスの違い
単語の使い分けの厳しさは、「感情表現」でも同じでした。
日本語の「好き」にあたる言葉にも種類があり、一般的な「ライク(Like)」のニュアンスと、恋愛や深い情愛を伝える「ラブ(Love、愛してる)」に近い言葉が明確に区別されています。
私は最初、このニュアンスの違いをよく理解しないまま、レッスンで間違えて「愛してる」に近い重い表現を使ってしまい、先生に「それはちょっと意味が変わっちゃいます!」と笑われてしまいました(笑)。
日本語の「お寿司が好き」と「あなたを愛している」くらいの違いがハッキリしているため、言葉の裏にある文化を学ぶ大切さを実感したエピソードです。
声調だけじゃない!「同じ音」に聞こえる罠
ベトナム語といえば、音を上げ下げする6つの「声調(せいちょう)」が難しいことで有名です。
私も最初は「声を上げるのかな?下げるのかな?」と大苦戦しました。しかし、勉強を続けていくうちに、声調とはまた別の「見えない壁」があることに気づきました。
それは、「日本人の耳には、まったく同じカタカナに聞こえる言葉が多すぎる」ということです。
1. 呪文のように出てくる「マイ」のバリエーション
例えば、教科書や会話でよく耳にする「マイ」という音。私には最初、どれも同じ「マイ」にしか聞こえませんでしたが、実際には文字も意味もすべて異なっていました。
- Mai(マイ) = 明日(例:Ngày mai = 明日)
- Mãi(マイ) = ずっと / 永遠に(例:mãi mãi = 永遠に)
- Máy(マイ) = 機械(例:máy tính = パソコン / máy bay = 飛行機)
先生に発音を直されても、最初のうちは何が違うのかサッパリ分かりませんでした(笑)。
2. 疑問文の定番「バオニユウ(Bao nhiêu)」の広がり
これも初心者が高確率で混乱する言葉です。
- Bao nhiêu(バオ ニユウ) = いくつ? / どのくらい?
この言葉はとても万能で、「何人?」「何個?」「何時間?」など、量を尋ねるときに広く使われます。そして、後ろに「お金」を意味する単語をくっつけると、お馴染みの買い物フレーズになります。
- Bao nhiêu tiền(バオ ニユウ ティエン) = いくらですか?(tiền = お金)
さらにベトナム語では、ここから「相手の年齢」を聞くときにも、独特のルールが加わってきます。

年齢の聞き方も激変!ベトナム語は「相手」で言葉が変わる
日本語では、子どもに対しても大人に対しても、基本的には「何歳ですか?」と言えば意味は通じますよね。しかしベトナム語では、相手の年齢層によって質問のフレーズそのものが変わります。
1. 大人に年齢を尋ねるとき
ベトナムの友人や、国際交流会などで大人の相手に年齢を聞くときは、以下のフレーズをよく使います。
- Bạn bao nhiêu tuổi?(バン バオ ニュウ トゥワイ?)
= 「あなたは何歳ですか?」
2. 小さな子どもに尋ねるとき
一方で、相手が小さな子どもの場合は、少しフランクで短い言い方に変わります。
- Mấy tuổi?(マイ トゥワイ?) = 「何歳?」
- Em mấy tuổi?(エム マイ トゥワイ?) = 「(ボク / ワタシ)何歳かな?」
3. 「Bao nhiêu」と「Mấy」の決定的な違い
私は最初、この2つの使い分けがサッパリ分かりませんでした(笑)。
オンラインレッスンの先生に質問してみたところ、明確なルールの違いを教えてくれました。
- bao nhiêu :基本的には「10以上」の大きな数や、広く全体に使える
- mấy :基本的には「10未満」の少ない数や、日常会話でよく使う
そのため、明らかに10歳未満である小さな子どもには「mấy」を使い、大人には「bao nhiêu」を使うというルールになっていたのです。
ベトナム人は話すスピードがとても速いため、交流会などで「今どっちを使った!?」と最初は頭がパニックになりましたが、毎週レッスンを受け、現場で耳にしているうちに、少しずつ自然と聞き分けられるようになっていきました。
「数字くらい簡単」と思ったら大間違い!驚きの『数字の変化』
ベトナム語を学び始めた頃、私は「単語は難しくても、数字くらいは暗記すれば簡単だろう」と高を括っていました。しかし、これが大きな間違いでした。
基本の数字(1〜10)までは、以下のようにとてもシンプルです。
- 1 = một(モッ)
- 2 = hai(ハイ)
- 3 = ba(バー)
- 4 = bốn(ボン)
- 5 = năm(ナム)
- 10 = mười(ムオイ)
ところが、これが「10以上」の組み合わせになると、特定の数字の『読み方(音)』が突然変化するという罠が潜んでいました。
初心者を惑わせる3つの数字の変化
- 「1(một)」の変化:
21を日本語のように「2(hai)+10(mươi)+1(một)」と言いたいところですが、ベトナム語では hai mươi mốt(ハイ ムオイ モッ)となり、1の音が「mốt」に変わります。私は最初、別の数字を言われたのかと思いました(笑)。 - 「5(năm)」の変化:
15や25など、お尻に5がつく時は音が「lăm」に変わります。(例:15 = mười lăm / 25 = hai mươi lăm) - 「4(bốn)」の変化:
4は普通「bốn」ですが、24などを言う時は人によって hai mươi tư(ハイ ムオイ トゥー)と、「tư」を使うことがあります。
電話番号や買い物のスピードはまさに戦い
国際交流会でベトナムの方から電話番号を聞いたときは、本当に聞き取れなくて撃沈しました。せっかく覚えた数字が「mốt」「lăm」「tư」と変化する上に、ベトナム人は「値段」「電話番号」「年齢」を言うスピードが桁違いに速いからです。
考えてみれば、日本語も同じくらい難しい
でも、少し冷静になって考えてみると、日本語にも同じような難しさがありますよね。
外国人の視点に立ってみれば、以下のような言葉の聞き分けは至難の業のはずです。
- 「雨(あめ)」と「飴(あめ)」
- 「橋(はし)」と「箸(はし)」
日本語の数え方にしても「1本(ぽん)」「2本(ほん)」「3本(ぼん)」と音が変わります。そう考えると、私たちと笑顔で日本語を話してくれているベトナム人の皆さんは、本当にものすごい努力をして言葉を習得したのだなと、改めて深いリクエスト(尊敬)の念が湧いてきます。
56歳からの挑戦、遅すぎることは何もなかった
私は56歳からこの勉強を始めました。
若い頃に比べると覚えるのには何倍も時間がかかりますし、驚くほどすぐに忘れます(笑)。
そのため、毎日コツコツと復習を欠かさないようにしています。昨日習った単語をもう一度見直すだけでもかなりの時間がかかりますが、それでも毎日少しずつ続けていると、ある日突然、聞き取れる言葉がパッと増える瞬間が訪れます。
何より、国際交流会などの現場で、覚えたてのつたないベトナム語を一生懸命使ってみると、現地のベトナム人の皆さんが本当に顔をクシャクシャにして喜んでくれるのです。その「通じた!」という瞬間の嬉しさが原動力となり、私は今も楽しく勉強を続けられています。
まとめ
ベトナム語は、同じ意味なのに相手で言葉が変わったり、耳を疑うような数字の変化があったりと、最初は本当に高い壁に感じられる言葉です。
しかし、その壁を一つひとつ乗り越えた先にある「現地の人との心の繋がり」や「文化への深い理解」こそが、ベトナム語学習の本当の面白さ(醍醐味)だと私は確信しています。
私もまだまだ勉強中の身です。56歳から始めても、焦らず、ゆっくり、毎日少しずつ続けていけば、耳は必ず慣れてくれます。これからもベトナムの皆さんとたくさん笑い合えるように、マイペースに楽しく学び続けていこうと思います!


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